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CASE STUDIES

Checkout株式会社

決済の「見えない損失」をゼロへ。アクル × Checkout.com が語る、決済最適化の新潮流

決済CVO

マーケティングコストをかけ、ようやく購入ボタンを押してもらったのに——決済の段階で静かに離脱・拒否が起きている。その損失に、多くのEC事業者がまだ気づいていない。

不正利用対策のリーディングカンパニー・株式会社アクルと、英国最大手のオンライン決済代行会社Checkout.comは、このたびパートナーシップを締結。両社の代表が「決済コンバージョン最適化」の最前線をテーマに対談を実施した。

近藤 修
株式会社アクル 代表取締役社長

慶應義塾大学卒業後、大和證券、日興ソロモン・スミス・バーニー証券(現シティグループ証券)を経て米国留学。2012年に国内決済代行会社大手であるGMOペイメントゲートウェイ入社、海外事業開発、PSP投資に従事。2015年イープロテクト社(現アクル)創業、代表取締役社長。京都大学経営管理大学院修了(経営学修士)。

佐々木 典子
Checkout株式会社 代表取締役 カントリー・マネージャー

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── まずは両社の会社概要について教えていただけますか。

アクルは設立からちょうど10年を迎えました。主なビジネスはクレジットカードの不正利用対策で、チャージバック保証や不正検知システムを提供しています。現在は350社超、45,000サイト以上のECカード加盟店にご利用いただいています。最近はPay系決済など他の決済手段への対応拡大や、売上向上のためのマーケティングツールの提供も始めています。

Checkout.comはオンライン専業の決済代行業者で、本社は英国ロンドンにあります。日本進出は2024年で、これから本格的に日本マーケットを開拓していくところです。グローバルでは2,000人以上の従業員が在籍し、EU・中東・北中南米・アジア各国に拠点を持ちます。年間10億ドルを超えるような大規模EC事業者を中心にご支援しており、グローバルの決済プロバイダーとして必ず名前が挙がる存在として認知いただいています。

── マーケティングの文脈では「集客」や「ナーチャリング」の話は活発ですが、決済プロセスそのものの成功率についてはあまり語られません。グローバルではどのような課題が認識されているのでしょうか。

まず「カゴ落ち」の問題があります。当社の調べでは、商品をカートに入れた方の約70%が、支払いに進まずに離脱してしまいます。残り3割の方が決済に進もうとする中で、EMV3-Dセキュア(以下、EMV3DS)の認証が分からずに離脱したり、面倒くさいという理由で離脱したりしているのが現実です。

さらに本人認証を通過して決済データが飛んだあとも、オーソリで資金不足やカード期限切れの理由によってリジェクトされたり、あるいは不正検知で弾かれるケースもありますが、特に問題なのが『フォルスポジティブ(偽陽性)』といって、正規のユーザーなのに「不正の疑いあり」として落とされてしまうことが結構起きています。これをやってしまうと、お客様の購買体験が非常に悪いものになり、二度と戻ってこなくなる。単なるコンバージョンの問題ではなく、顧客リテンション全体に影響します。

グローバルでは非常に大きなテーマです。AIなどの技術が進化すると不正の手口も進化しますので、イシュア側も厳しく見る。ただ、通さないと売上が上がらない。このバランスが難しいのです。特にクロスボーダー取引では、海外のイシュアが『聞いたことのない加盟店だから怪しい』として弾いてしまうケースもあり、国内発行カードと海外発行カードの承認率には大きな差が出ています。

日本は2025年4月にEMV3DSの必須化がスタートして、原則すべての加盟店が導入しています。チャージバックがなくなりますので加盟店にとって良いことなのですが、当社のお客様からは『なんとなく離脱が増えた気がする』というご相談を多くいただくようになりました。実際にデータを見ると、EMV3DSの本人認証ステップで『謎に弾かれている』トランザクションが見えてくる。これが見えない損失です。チャージバックが減ったが、売上も下がっている、というケースが意外と多くて、しかも気づいていない加盟店がほとんどです。

データを細かく見ると、ちょっとした工夫で改善できる部分が実はかなりあります。当社では『イシュアアウトリーチ』という取り組みで、実際にイシュアと対話しながら『このフォーマットで送ったら通りやすい』といった協議をしています。こうした地道な分析と改善が重要だと感じています。

そこまで細かいデータを見られるプレイヤーって、日本ではなかなかいないかもしれません。日本は加盟店・PSP・ネットワーク・アクワイアラ・カードブランド・イシュアという多層構造で、各プレイヤーがどこまでデータを見ているかというと、詳細まではあまり見ていない。データも不透明なまま流れているのが現状です。

ファクトベースで話を進めないと交渉はうまくいきません。生のデータをどれだけ見られるかというのは非常に大事です。

実は不正対策を能動的に行う加盟店が減っています。EMV3DSの実装でチャージバックの責務が原則なくなるので、『見なくていい』という感覚になっている。ところが不正は確実に発生しています。アカウント・テイクオーバーによるECの会員アカウントの乗っ取りが増えており、紐づいたクレジットカードで決済行われるとEMV3DSも突破されてしまう。不正が増えるとイシュアが加盟店のリスク判定を厳しくして承認率が下がる、という悪循環が静かに起きているのです。

おっしゃるとおりです。不正が発生するとイシュアはカードを無効化して新規発行しなければならず、カードホルダーも再登録の手間がかかる。さらに『あのサイトは危ない』という評判でお客様が来なくなる。1件の不正が連鎖的なダメージをもたらします。

── Checkout.comのPSPとしてのサービスの特徴や「インテリジェント・アクセプタンス」の仕組みをお聞かせいただけますか。

私どもは直接ブランドネットワークに接続していますので、そこを流れる「生のデータ」がすべて見えます。加盟店手数料の内訳——イシュアの取り分、ブランドの取り分、当社の取り分——まで全部透明に見える形にしており、どういうカードが、どのくらいの金額で、どういうタイミングで流れているかというデータを見ながら、AIを駆使してパターンを分析しています。

AIがリアルタイムで学習し、最も決済が通りやすいルーティングを瞬時に判断します。住所フォーマットの最適化、有効期限切れカードの自動更新、承認失敗時の再ルーティング——こういったことをすべて自動で行います。平均で約9%の承認率改善を実現しています。

専任のアカウントチームが加盟店のビジネスを深く理解したうえで、分析・改善提案・不正パターンのチューニング、そしてイシュアアウトリーチまで全部セットで行います。単に決済をさばくゲートウェイではなく、お客様のパートナーとして並走していくスタンスです。トップラインを一緒に伸ばしていきましょう、というのが私どものミッションです。

Checkout.comはグローバルでローカルアクワイアリングを展開しており、海外売上比率の高い日本の企業にとって、グローバル契約により海外進出時の決済導入がスムーズになります。また、グローバル全体でのデータ一元管理も可能です。

多くの加盟店は決済手数料を一種類と認識していますが、実際はカード種類、業種、地域、特典利用の有無などにより手数料は異なります。特に海外からのクロスボーダー取引は手数料が高くなる傾向があり、全体の手数料を押し上げる要因となります。決済手数料の最適化のため、国内カード発行分は国内で、海外カード発行分は対象国でアクワイアリングを行うことを提案しています。これにより、決済手数料の低減と、ローカルでの承認率向上が見込めます。

── アクルからみる日本国内におけるEMV3DSの課題、コンバージョンの影響について、どのような取り組みをしているかお聞かせください。

EMV3DSの必須化でチャージバックがなくなり安心してしまっている加盟店が多い。ただ実際には、EMV3DSの本人認証プロセスでデータが最適化されずに離脱が起きています。特に、日本の決済構造は、加盟店からカードブランドまで多層的で複雑です。この構造の中で、各プレイヤーはデータを細かく見ることにあまりフォーカスしていません。結果として、加盟店側も分析できず、不透明な情報が流通しています。この不透明さを解消し、改善する取り組みが必要です。

当社では、不正検知システム「ASUKA」のDashboardからEMV3DSデータも見られるようになっているので、ドメインサーバーやアクセスコントロールサーバーでなぜ弾かれているかを可視化することができ、さらに自動的に最適化する『決済CVR最適化サービス』を提供しています。

ある加盟店さんでは、EMV3DSに流すデータを最適化することで、年間で約10億円の売上向上が見込めるという試算が出ています。それだけの損失が、データを見る前は誰にも見えていなかったわけです。

すごい数字です。加盟店さんからすると、これをコストとしてしか見ていないケースが多いのですが、マーケティングファネルで考えると全然違う話です。新しいお客様を1人獲得するコストと、不正を1件防ぐコストを冷静に比較すると、全然違います。

その通りです。コモディティ商材だと、決済手続きで離脱したお客様は競合ECサイトに流れてしまう。対策にお金をかけてチャージバックがなくなった、ではなく、売上自体が毀損している可能性に目を向けてほしいと思います。

リード獲得・ナーチャリングに費用をかけて、ようやくお客様が購入ボタンを押したのに、決済で離脱されてしまう。これをマーケティングの観点からは、むしろその損失を防ぐために投資すべきだという考えになるはずです。しかし、ECの現場担当者とマーケティング担当者が別ラインで動いていて、不正検知のチェックを入れるとコンバージョンが下がる、というトレードオフの議論が社内で起きてしまっている。この認識を変えていくことが最大の課題だと感じています。

グローバルでは大きな加盟店さんだと『チーフ・ペイメント・オフィサー』という役職があって、承認率の細かいデータまで日常的に見ています。決済はビジネスのコアとして捉えられている。

日本はまだ専任が少なく、構造的にデータが見えにくいという事情もありますが、この意識の差が結果の差になっていると感じます。

── EC加盟店の経営陣、担当者に向けて、まず何から着手して、どこをゴールにしてアクションしていくのがよいでしょうか。

決済を『コスト』として捉える考え方を変えていただきたいと思います。日本の決済市場は、まだ最適化の余地が非常に大きく、言い換えれば宝の山です。最初のステップは『見える化』をして、どこに損失が潜んでいるかを把握することです。業界ベンチマークと自社を比較して、例えば承認率が20ポイント低いなら、それが何億円の機会損失に相当するかを数字で示せる。そこから経営判断につながります。

日本のEC化率はグローバルと比べるとまだ低く、ECサイトの売上を最適化するというステージにいらっしゃらない事業者もまだ多い。逆に言えば、これからの伸びしろが大きい。国境を越えて買い物に来る方も増えていますし、ECを強化することは日本企業にとって非常に大きなビジネスチャンスです。

日本のマーケットは構造的な課題はありますが、だからこそ最適化の余地も大きい。まずは『分析』から始めていただきたい。データを可視化して、どこで何が起きているかを把握する。当社でもEMV3DSの離脱ポイント可視化や自動最適化サービスを提供していますし、Checkout.comさんのような知見のある会社に相談するのも非常に有効です。

そしてCheckout.comさんのようなグローバルプレイヤーが日本に来て、構造的な慣習に挑戦してくれることで、業界全体が動くファーストステップになると思っています。日本のEC化率はまだ10%を切るレベル。伸びしろはまだまだあります。

私どものミッションは、デジタルエコノミーを盛り上げること。1社で頑張るより、アクルさんのような日本のマーケットをよく知るパートナーと組むことで、グローバルの良さとローカルの知見を融合させられる。パイを奪い合うより一緒に大きくしていきたいと考えています。

将来どんなに新しい決済サービスが出てきても、必ず重箱の隅をつつくような不正も生まれます。我々もそういったところのカバー役として常に新しい課題に向き合い、ソリューション提供を続けていきたいと思います。

業界の変化スピードは非常に速い。エージェンティック・コマースなど新しい流れも来ています。その中で、われわれのようなPSPが真ん中のレイヤーとして『ここから先はお任せください』という形で支えていきたいと思っています。日本企業にグローバルで勝ってほしい——そのための決済最適化に、ぜひ一緒に取り組みましょう。


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